こみづくりレビュー:
YG-1ジャパン

YG-1ジャパンの皆様にお話を聞いてみました

ハイエンドからローエンドまで幅広いラインナップ。
ラウンドツールで世界トップシェアを誇る工具メーカー


COMINIXがYG-1製品の販売を始めてから2年以上が経過した。
改めて、YG-1とはどういった工具メーカーなのかインタビューを実施しました。

COMINIXとしては様々な切削工具メーカーを取り扱っている中で、
どのターゲットに向けた提案に活用していけばいいのだろうか。

また、COMINIXテクニカルセンターとしてYG-1ジャパンに協力してほしいことも率直にぶつけてみました。



Zoomでのインタビューに応じてくれたYG-1ジャパンの皆様
左から文社長、須田部長、森課長【以下敬称略】




----------本日はよろしくお願いいたします。
一同 よろしくお願いいたします。
高いシェアを誇るYG-1製品
----------YG-1は韓国発のナショナルメーカーですが、市場の現状はいかがでしょうか。
 韓国の切削工具市場は約2300億円(編集部注:日本は約4000億円)ですが、新型コロナウィルスの影響もあり、主力の自動車産業の減産による需要低迷が続いています。 経済成長率はG20とOECD37ヵ国のなかでは、韓国経済の落ち込みは穏やかだと予想されていますが、YG-1としては5月までの2%の成長率から一転し、6月以降急速に減少するフェイズに入ると予想しています。

----------マーケットシェアはどのくらいですか?
 YG-1の韓国国内のマーケットシェアはエンドミル5割、ドリル7割、タップは4割で国内No.1のシェアです。 生産は韓国国内だけでなく、ドイツ・アメリカ・カナダ・インド、中国では2ヶ所に生産拠点があります。
標準品の販売がメインとなっていますが、最近は特殊品のニーズも非常に高くなっているためドイツとアメリカにはソリューションを提供するためのTechセンターもあります。
YG-1は売上の海外比率が高く、販売先も幅広いことが特徴で、売上の7割以上が北米やメキシコ・ラテンアメリカ・欧州・アジア向けで構成されています。一方、日本の工具メーカーの海外比率は3割~4割程度で、販売先もアジア地域が多いと思います。



超硬ソリッド工具で世界No.1のシェアと生産量を誇る
(YG-1 official Youtubeチャンネルより)

YG-1の販売戦略
----------YG-1製品のメインユーザーはどこでしょうか
 主に自動車産業や航空機関係、半導体や発電関連部品などのユーザー様がメインです。

----------YG-1製品の切り替え確率が高かったり、切り替えの実績が多い競合他社はありますか。
 世界的に言うと、得意な競合他社製品はもはやほとんど切り替えてしまったと言えるため、ターゲットとは言えないのではないかと思っています。それよりもYG-1製品を通じてお客様のニーズにお応えすることが弊社の使命だと考えています。
ただし、日本はまだまだこれからです。

----------ワークや設備などのカテゴリーで考えたときに、特色のある製品はありますか?
 金型加工向けに幅広い製品群があることが大きな強みです。また、小径サイズの製品は日本市場向けに特化し、設計・製造している事が特徴です。ただ、弊社は様々な製品を展開していますが、やはり超硬ソリッドエンドミルが1番最初にオススメしやすいと思います。
日本は巨大な市場ですし超硬ソリッドエンドミルだけに絞っても競合が多いですが、弊社は幅広い製品ラインナップを揃えていますので、ニーズにお応えできると考えています。





YG-1のもともとの社名は養志園工具。「志を育てる庭でありたい」という意味がある
(提供:YG-1ジャパン)




----------製品開発はどのように行っているのでしょうか
 昔はすべての製品開発を会長の宋が決定していました。今はYG-1も変化し、営業が収集した世界中のユーザー様からの声を反映して開発チームが製品を企画し、マーケティングチームが市場調査を行って製品化しています。ただ、本当に長い間、宋がたくさんのアイテムを開発している会社でした。(笑)
今ではYG-1の製品開発チームには、世界各国から豊富な知識と経験を持った人材が集まっています。その中には工具メーカーの開発職だった人材も多数含まれています。

----------韓国の製造業は日本で多く見られるような長く1社で働く雇用システムではなく、欧米型のようなシステムなのでしょうか。YG-1が比較的欧米型のシステムなのでしょうか?
 長い間、日本と韓国の雇用システムは同じで、私と同世代やそれ以上の人たちは一つの会社に長く勤めることが一般的でした。 しかし最近では韓国の雇用環境は大きく変化してきており、いくつかの会社を渡り歩いて役職や給料を上げていくことは、珍しいことではありません。



最高品質と低価格が要求される日本市場
----------日本と海外の切削工具市場の違いはありますか?
 私は18年間韓国の本社にいて、北米・ラテンアメリカ・欧州や中国でYG-1製品の販売拡大を行い、2年前に日本に赴任してきました。 私の印象ですが日本市場は世界で一番難しいと感じています。 日本以外の市場は非常にシンプルで、高品質・高価格なニーズと安価で汎用的な商品を求めるニーズが明確に分かれており、技術サポートのニーズもある程度限定的です。 弊社としては、はじめは汎用的な商品を販売することでYG-1製品の認知度を上げ、販売を増やすことが出来ました。
一方、日本の市場は品質や在庫状況などに非常に厳しく、人間関係や技術的サポートも含めて、全てが完璧でないと取引が成立しません。 それに加えて、全般的に高品質製品でもかなり価格が安い。





日本国内には非常にたくさんの切削工具メーカーがありますから、欧米の世界的なシェアをもつナショナルブランドであっても日本で売り上げを伸ばすことは非常に難しいのだと思います。
YG-1は欧米や中国など世界のいくつかの大きな市場で成功してきたという自信がありますが、日本市場はYGブランドを成功させるための最後のステージです。 そのために私たちはもっとCOMINIXさんに対して品質や価格、ラインナップの面からもサポートをしていかなければならないと考えています。
残念なことに今年はコロナウィルスの影響で日本も経済が悪化することが見えていますが、私たちのシェア拡大という点においてはこの状況はチャンスではないかと考えています。 なぜなら販売店様もユーザー様も経済状況が悪化すると、より競争力のある製品を世界中から探し求め、使い始めるようになるからです。 私たちYG-1ジャパンはCominixさん、YG-1本社との間に立ち、連携を深め、現状を打破したい。そう考えています。

私たちもこのような経済状況に振り回されず安定的な基盤をどうやって築くか、明確な方法を知っているわけではありませんが、 COMINIXさんが世界はもちろん国内においても卸売事業・直売事業などの幅広い販売網を構築してきたことは1つの良い方法です。
この記事を見て頂いている皆様が、今お使いの商品で価格や供給などでお悩みがあれば、ぜひご相談いただければと思います。


加工機が並んでいる様子
(提供:YG-1ジャパン)




最初のプロジェクトは成功した
----------COMINIXとの取り組みに関する正直なご意見をお願いします
 COMINIXさんとの最初のプロジェクトについては成功したと考えています。第2弾のプロジェクトについては関西地域では成功していますが、その他の地域ではもっと伸ばせる余地があると感じています。 日本市場で販売を伸ばしていくには多くの時間がかかることは理解していますので、世界中で実績のあるYG-1製品をどうすれば提案してもらえるか。どうすれば最初の1本目を使っていただけるかを考えていますし、COMINIXさんと一緒に考えていきたいです。

 弊社としては、より多くの製品技術情報をご準備・配布していきたいと考えています。


----------そうですね。私たちは切削加工を専門としている商社ですので、"○○向け工具"だけでは販売に活かせませんし、応用もしにくいです。 例えば"ステンレス向け工具"であれば耐溶着性能や切れ味のよさが推測できますし、溝が深く設けられていることも想像がつきます。推測通り切れ味が良いのであれば機械剛性が低い加工やバリ対策でも提案出来ます。
ただし、私たちの提案営業のためには、" どういう理由で " 工具メーカーさんがステンレス向けとしているのかは最も重要な情報です。切れ刃の形状次第では現行品よりも切れ味が悪い可能性も考えられるからです。 これは弊社はもちろん、ユーザーさんとしてもごく一般的なお話であると思います。


5軸加工機用工具の測定器
(提供:YG-1ジャパン)



 おっしゃる通りで、グローバルで大きなシェアを持つ海外の工具メーカーが日本市場でシェアを伸ばせていない理由はそこなのだと思います。あまり多くの情報を開示したがらないのですね。 私たちはそこをブレイクスルー出来るようにします。

須田 日本発のメーカーさんであれば基礎的と捉えられるような技術情報やテストレポートなどの販売ツールを適切にご準備できていない事は大きな問題点であると認識しています。 こういった部分は時間はかかりますが本社に対して認識を改めるよう粘り強く要請し、開示出来るように働きかけていきます。

どのように製品をお届けできるか
----------COMINIXテクニカルセンターとしては、私たちオリジナルで工具やコーティングの特性を客観的かつ論理的に説明できるようなデータづくりや情報開示を目指していますが、なかなか対抗品の選定や加工条件の設定が難しいのが現状です。
私が営業として切り替えた実績をもとに、類似のワーク材質や対抗品を準備してテストしていますが、今後はYG-1がもつケーススタディなどを参考にしたいと考えています。 このあたりは日本の切削工具メーカーでも対応が難しい部分ですが、いかがでしょうか。
 弊社には世界中からテストレポートが集まり、参照できるようなシステムを持っています。今後はそれを使って情報共有をしていこうと思います。


ドイツのテクニカルセンター
(YG-1 official Youtubeチャンネルより)



----------最後になりますが、記事の読者の皆さんにメッセージはありますか?
 私たちは汎用的な製品だけではなく、特定のワーク材質向けのV7plusやX5070、4G Millsなどのハイエンド製品にも力を入れています。 YG-1はCOMINIXさんをはじめ、ユーザーさんや販売店さんに対して様々な製品群を提案することで改善のサポートをしていきたいと考えています。 あとはどのように製品をお届けできるかという部分がキーポイントになるかと思います。とにかく一度使っていただきたいという思いです。

----------本日はお時間を頂きまして、ありがとうございました。今後ともよろしくお願いします
一同 ありがとうございました


最新鋭のCVDコーティング装置
(提供:YG-1ジャパン)


X線分析装置・顕微鏡
超硬やハイスの微細構造の分析や、コーティングや表面処理の成分分析をすることが出来る。
対抗品の情報を丸裸にすることが狙い。
(提供:YG-1ジャパン)








edited by yuki takashima
supported by YG-1 japan